塗り絵が単なる遊びではない理由
2歳の子どもがクレヨンを持つ様子を見ると、指ではなく拳全体で握り込み、肩から腕全体を動かして線を引いています。4、5歳になると多くの子が親指・人差し指・中指の3本で持つ三点持ちに移り、手首はほとんど動かさずに指先だけで細かく動かせるようになります。この変化は自然に訪れるわけではありません。塗り絵のように抵抗のない手の動きを、10分、15分と繰り返し続けることで少しずつ育っていくものです。
同じ1枚の上で語彙力も育ちます。どこに何色を塗るか考え続けるうちに、「赤」「青」だけでなく、12色のクレヨンの中でも青緑と紺の違い、3種類の緑の微妙な差まで見分けられるようになります。
こうした効果をわざわざ子どもに説明する必要はありません。手が忙しく動いているうちに心も自然と落ち着いていく、これは大人が会議中に落書きをして得る感覚に近く、塗り絵は勉強というより情緒を整える道具にずっと近いのです。
年齢によって難易度を変えるべき理由
3歳の子どもが仕上げた絵は、表紙の見本とはまるで違って見えることがよくあります。クレヨンの跡が線からはみ出し、色が幾重にも重なり、白い部分の多くは手つかずのまま残る。この年齢では手を境界線でぴたりと止める力がまだないためで、心配することではありません。風船ひとつ、大きなりんごひとつのように太い輪郭と広い面で構成された図案なら、まだ備わっていない精密さを求められることなく、達成感を味わえます。
6歳ごろになると絵は変わります。多くの子がおおむね線の内側にとどまり、力加減で濃淡をつけられるようになり、手近なクレヨンを適当に使うのではなく、始める前に色の組み合わせを考えることもあります。動物や果物のように輪郭がやや細かい図案がこの年齢の興味を引き始めるのはそのためで、手がようやくその細部に気づき、楽しめるようになったということです。
7、8歳ごろ、手が安定し我慢強さも育ってくると、具体的な絵よりもマンダラのような左右対称で繰り返しのある模様のほうが合うことが多くなります。正解がなく、繰り返し自体が魅力になっているようで、動物の絵には5分と座っていられなかった子が、マンダラの前では20分じっと座り続けることもあります。
色選びは子どもに任せましょう
空を緑に、りんごを青に塗るのは間違いではなく、ひとつの選択です。それを直すべきものとして扱うと、子どもは塗り絵を手で何かを表現する活動ではなく、正解を当てる課題として学んでしまいます。
直す代わりに尋ねてみましょう。「どうして犬を紫にしたの?」という問いはほんの2秒で済みますが、色彩理論を説明するよりずっと大きな効果があります。子どもは自分の選択が評価されるのではなく、話す価値のあるものだと学びます。
親がやりがちな3つの落とし穴
親がやりがちな失敗には、ある程度共通のパターンがあります。1つ目はその場で色や線の選び方を直してしまうこと。子どもの手をそっと線の内側に押し戻したり、「芝生は紫じゃないでしょう」とクレヨンを差し替えたりすると、その絵はもう子ども自身のものではなくなってしまいます。
2つ目は時間がないときに代わりに仕上げてしまうことです。忙しい朝にはつい手が出てしまいますが、子どもが半分だけ塗った絵は、親が完成させた絵よりずっと価値があります。時間が足りなければ、半分のまま残して後で続けるか、そこで終わりにしてしまって構いません。
3つ目は丁寧さを努力より先に褒めてしまうことです。「わあ、線の中に完璧に塗れたね!」と毎回言い続けると、子どもは過程を楽しむよりきれいさを追いかけるようになり、それに比べて自由奔放に塗った絵は失敗のように感じられてしまうことがあります。
はっきり言っておきたいこともあります。塗り絵がすべての子どもに合うわけではありません。体を動かしたり言葉で表現したりするほうが得意な子にとっては、クレヨンを持ってじっと座っていること自体が退屈、あるいはむしろストレスに感じられることもあります。子どもが図案を30秒で押しやってしまうことが一度や二度でなく続くなら、それは直すべき問題ではなく、有用なサインです。その子には粘土遊びや積み木、自由に描く絵のほうが、同じ発達効果をもっとよく果たしてくれるかもしれません。
気持ちを落ち着ける「切り替え活動」として使う
公園で思い切り走り回った直後や、きょうだいとけんかした直後のように感情が高ぶっている状態からいきなり宿題に移ると、子どもも、座らせようとする親も疲れてしまいます。こんなとき、塗り絵1枚が橋渡しになります。「1枚塗ったら読書を始めようね」のように、短く具体的な課題を先に与えるのです。
この方法がうまくいくのは、塗り絵に正解がなく、失敗のしようがないからです。手を動かす数分の間、うまくやらなければというプレッシャーが消え、それだけで神経が自然と落ち着いていくようです。
1週間のルーティンに塗り絵を組み込む
毎日新しい図案を用意する必要はなく、それをまた1つの「こなすべきこと」にしてしまうと、興味はかえって早く失われます。月曜と木曜の夜には動物や果物の図案、時間に余裕のある週末にはマンダラのようなもう少し凝った図案を、というゆるやかなリズムのほうがうまくいきます。
ワークシートジョイの動物・果物・マンダラの図案は難易度別に分かれているので、疲れた夜には簡単な図案を、子どもが長く座っていられそうな気分のときは難しい図案を選びやすくなっています。お金のかからない小さな習慣をもう1つ加えるなら、完成した絵を冷蔵庫や部屋のドアに貼ることです。5秒で終わる儀式ですが、翌日また塗りたいと子どもが思う本当の理由になることが多いのです。